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筋交いだけ増やしても耐震性は上がらない?理由と正しい補強方法|設計士が解説

耐震相談で必ずといっていいほど受ける質問があります。

筋交いを増やせば
地震に強くなりますよね?

正直に言うと、筋交いだけ増やしても大きな効果が得られないケースがほとんどです。
むしろ、バランスを崩して逆に弱くしてしまうことすらあります。

じゃあ、筋交いって意味ないんですか?

意味はあります。
ただし“そこだけ”補強しても地震には勝てません。

匿名の設計士
匿名の設計士

今回は、プロが日頃から感じている“よくある誤解”を、構造の本質からお話しします。


筋交いを入れる前に「構造体そのものの強度」を確認すべき理由

筋交いは、あくまで既存の柱・梁の強度が十分にあることが前提です。
古い木造住宅では次の弱点がよく見られます。

  • 柱脚・柱頭の接合金物が弱い
  • 土台の腐朽(シロアリ被害含む)
  • 梁成が不足しており、水平力に耐えられない
  • 基礎が無筋で、せん断破壊を起こしやすい

この状態で筋交いだけ増やしても、耐力壁としての性能に建物が追いつかない
地震時には、筋交いよりも前に柱や接合部が壊れてしまうケースもあります。

つまり、筋交いは“補助装置”であり、主役は構造体そのものの強度なのです。

木造住宅で筋交いを増設した耐震補強の施工図

壁だけ強くしても倒壊は防げない|水平構面の不足という落とし穴

筋交いや面材で壁を強化したとしても、水平構面(床・小屋組)が弱いと力が伝わりません

木造住宅の水平構面と耐力壁の力の流れを示す模式図

地震で横から力がかかると、建物は
→床 → 壁 → 基礎 → 地盤
の順に力を逃がします。

しかし、築30年以上の住宅では、

  • 2階の床組が弱い
  • 根太天井で水平剛性が足りない
  • 野地板がバラバラで屋根面が“たわむ”
  • 在来工法で水平構面の考え方がそもそも不十分

といった理由から、壁まで力がうまく伝達されず、建物が“ねじれる”ように揺れるのです。

匿名の設計士
匿名の設計士

壁を強くしても、
床と屋根(水平構面)が弱ければ耐震性能は上がりません。

ここはプロでも見落としがちなポイントです。


よくある失敗例|筋交いの“点の補強”は建物を弱くすることも

● バランスを崩して“ねじれを増大”させる

片側の壁だけ強くしすぎると、地震時に弱い側がねじれながら倒れます。
耐震では“量”より“配置バランス”が最重要。

耐力壁の偏りによって建物がねじれるように揺れる現象の図解

● 接合部が先に壊れてしまう

筋交いは強い。
しかし柱頭・柱脚金物が弱い。
→ 地震時に金物が破断し、筋交いは“飾り”と化します。

● 基礎が割れる

壁が強すぎると、弱い基礎が耐えきれず先に破損します。
基礎補強なしの壁強化はリスク大。


正しい耐震補強の順序は「壁」ではなく「構造全体」

耐震補強は、以下の順序で考えるのがもっとも安全で費用対効果も高いです。

  1. 基礎の健全性を確認(場合によって補強)
  2. 構造体(柱・梁・土台)の劣化・寸法を確認
  3. 水平構面(床・屋根)の剛性確認・補強
  4. 耐力壁の配置バランスを整える
  5. 必要な量とバランスに合わせて筋交い・面材を追加
匿名の設計士
匿名の設計士

筋交いは“最後に整えるパーツ”であって、
耐震補強の中心ではありません。


2025年法改正で“筋交いだけ補強”はさらに危険に

2025年4月の法改正で、
リノベーションや大規模改修時は構造検討が必須になりました。

つまり、
“壁だけ直せばいい”
という発想はすでに通用しなくなっています。

構造全体の計算なしに筋交いだけ増やすと、
法的にも、構造的にも不十分なリノベに分類される可能性があります。

匿名の設計士
匿名の設計士

“耐震補強の全体像”については
『耐震改修・住宅構造ガイド|後悔しない家づくりのポイント【2025年版】』
https://sumai-knowledge.com/taishin-renovation/taishin-house-check/
に詳しくまとめています。

耐震補強は「家の状態に合った工法」を選ぶことが極めて重要です。
部分的に直すのか、構造全体を強化するべきかは、専門家の現地調査でしか判断できません。

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