耐震相談で必ずといっていいほど受ける質問があります。
筋交いを増やせば
地震に強くなりますよね?
正直に言うと、筋交いだけ増やしても大きな効果が得られないケースがほとんどです。
むしろ、バランスを崩して逆に弱くしてしまうことすらあります。
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じゃあ、筋交いって意味ないんですか?
意味はあります。
ただし“そこだけ”補強しても地震には勝てません。
匿名の設計士
今回は、プロが日頃から感じている“よくある誤解”を、構造の本質からお話しします。
■ 筋交いを入れる前に「構造体そのものの強度」を確認すべき理由
筋交いは、あくまで既存の柱・梁の強度が十分にあることが前提です。
古い木造住宅では次の弱点がよく見られます。
- 柱脚・柱頭の接合金物が弱い
- 土台の腐朽(シロアリ被害含む)
- 梁成が不足しており、水平力に耐えられない
- 基礎が無筋で、せん断破壊を起こしやすい
この状態で筋交いだけ増やしても、耐力壁としての性能に建物が追いつかない。
地震時には、筋交いよりも前に柱や接合部が壊れてしまうケースもあります。
つまり、筋交いは“補助装置”であり、主役は構造体そのものの強度なのです。

■ 壁だけ強くしても倒壊は防げない|水平構面の不足という落とし穴
筋交いや面材で壁を強化したとしても、水平構面(床・小屋組)が弱いと力が伝わりません。

地震で横から力がかかると、建物は
→床 → 壁 → 基礎 → 地盤
の順に力を逃がします。
しかし、築30年以上の住宅では、
- 2階の床組が弱い
- 根太天井で水平剛性が足りない
- 野地板がバラバラで屋根面が“たわむ”
- 在来工法で水平構面の考え方がそもそも不十分
といった理由から、壁まで力がうまく伝達されず、建物が“ねじれる”ように揺れるのです。
匿名の設計士壁を強くしても、
床と屋根(水平構面)が弱ければ耐震性能は上がりません。
ここはプロでも見落としがちなポイントです。
■ よくある失敗例|筋交いの“点の補強”は建物を弱くすることも
● バランスを崩して“ねじれを増大”させる
片側の壁だけ強くしすぎると、地震時に弱い側がねじれながら倒れます。
耐震では“量”より“配置バランス”が最重要。

● 接合部が先に壊れてしまう
筋交いは強い。
しかし柱頭・柱脚金物が弱い。
→ 地震時に金物が破断し、筋交いは“飾り”と化します。
● 基礎が割れる
壁が強すぎると、弱い基礎が耐えきれず先に破損します。
基礎補強なしの壁強化はリスク大。
■ 正しい耐震補強の順序は「壁」ではなく「構造全体」
耐震補強は、以下の順序で考えるのがもっとも安全で費用対効果も高いです。
- 基礎の健全性を確認(場合によって補強)
- 構造体(柱・梁・土台)の劣化・寸法を確認
- 水平構面(床・屋根)の剛性確認・補強
- 耐力壁の配置バランスを整える
- 必要な量とバランスに合わせて筋交い・面材を追加
匿名の設計士筋交いは“最後に整えるパーツ”であって、
耐震補強の中心ではありません。
■ 2025年法改正で“筋交いだけ補強”はさらに危険に
2025年4月の法改正で、
リノベーションや大規模改修時は構造検討が必須になりました。
つまり、
“壁だけ直せばいい”
という発想はすでに通用しなくなっています。
構造全体の計算なしに筋交いだけ増やすと、
法的にも、構造的にも不十分なリノベに分類される可能性があります。
匿名の設計士“耐震補強の全体像”については
『耐震改修・住宅構造ガイド|後悔しない家づくりのポイント【2025年版】』
https://sumai-knowledge.com/taishin-renovation/taishin-house-check/
に詳しくまとめています。
耐震補強は「家の状態に合った工法」を選ぶことが極めて重要です。
部分的に直すのか、構造全体を強化するべきかは、専門家の現地調査でしか判断できません。
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を使えば、工事内容の妥当性や、どこまで補強すべきかも判断しやすくなります。


