セルロースファイバーは天然素材で調湿するから、防湿シートは不要です。
工務店や専門業者から、そんな説明を受けたことはありませんか?
確かにセルロースファイバーは優れた断熱材です。
しかし、19年目の設計士として断言します。
「調湿するからシート不要」という考え方は、日本の多くの地域において非常に危険なギャンブルです。
なぜ、目に見える結露がなくても家が傷むのか?
なぜ、最新のシミュレーションソフト(WUFI)の結果を鵜呑みにしてはいけないのか?
この記事では、カタログスペックには載らない「加水分解」のリスクと、セルロースファイバーの性能を100%引き出すための真の施工ポイントを解説します。
第1章|「水滴」にならなければ安心、という誤解
多くの業者が言う「結露しない」とは、コップの表面に付くような「液状の水滴」が出ないことを指しています。
しかし、本当の恐怖は別のところにあります。
1. 霧状の結露が「加水分解」を招く
たとえ水滴にならなくても、壁の内部が「湿度100%に近い状態(霧状の結露)」が続けば、木材や素材そのものが水分と反応してボロボロになる「加水分解」のリスクが高まります。
「濡れていないから大丈夫」ではなく、「高湿度が続くだけで構造は寿命を縮める」のです。
2. WUFI(非定常熱湿気同時移動解析)の罠
最新の計算ソフト「WUFI」を使っても、「カビや腐朽のリスク」まで読み取れる業者は一握りです。
計算上「表面結露なし」と出ても、冬の夜間に壁内で湿気が飽和状態になることは珍しくありません。
第2章|セルロースファイバーでも「防湿処理」が必須な理由
「呼吸を妨げるからシートは貼らない方がいい」という意見もありますが、それは「防湿」と「気密」を混同しています。
なぜ防湿シートが必要なのか?
- 壁内への湿気流入を「制限」するため:
呼吸させるにしても、冬場に室内から入る大量の湿気を無制限に受け入れれば、セルロースの許容量を超えます。 - 夏型結露への対応:
[防湿シートと可変防湿シートの違い] でも解説した通り、夏場は逆に屋外から湿気が入ります。これをコントロールするには可変防湿シートが不可欠です。

第3章|失敗しないための「施工チェックリスト」
セルロースファイバーの性能は、素材よりも「密度」と「付随する処理」で決まります。
- 吹き込み密度(55kg/㎥以上)の確認
密度が低いと、数年後に重みで沈下し、壁の上に「断熱の欠損(隙間)」が生まれます。 - コンセントボックスの気密処理
[気流止めがない家は断熱しても寒い] の通り、ここを怠るとせっかくの防音性能も台無しになります。 - 沈下防止のメッシュ・シート施工
将来、壁の中で断熱材が痩せていないかを確認するための点検口の有無。
第4章|設計士が教える「セルロースファイバー」の選び時
この断熱材は、以下のような悩みを持つ方には最高の選択肢になります。
- 騒音に悩みがある: 圧倒的な吸音・遮音性能。
- 火災保険を安くしたい: 省令準耐火構造への対応。
- 数値以上の快適性を求めたい: [断熱等級6・7の厚さ早見表] のUA値だけでは測れない「蓄熱性」による体感温度の安定。
まとめ|「素材の良さ」を「施工の妥協」で消さない
セルロースファイバーは、正しく扱えば「一生モノ」の断熱材です。
しかし、「シート不要」という甘い言葉に乗り、加水分解で家を腐らせては本末転倒です。

もし、依頼先の業者が「うちはシートを貼りません」と言い切るなら、ぜひ一度その理由と「加水分解への対策」を問いかけてみてください。

※「セルロースファイバーの施工実績と、WUFI計算の理解がある会社を」と指定することをお勧めします。


