グラスウールは、住宅断熱材の中でも最も広く使われている素材です。
この記事では、その製造方法や性能、価格面で評価される理由
そして実際の現場で起こりやすい注意点まで、設計士の視点から
わかりやすく解説していきます。
グラスウールって安いけど、性能は大丈夫なの?
家づくりの相談で、よくいただく質問のひとつです。
結論から言うと、グラスウールは“正しく使えば”非常に優秀な断熱材です。
ただし、「正しく使えば」の部分がとても大きい。
これがプロの本音です。
グラスウールってどんな断熱材?

グラスウールは、ガラスを細かい繊維にした
“綿状の断熱材”。
製造工程はシンプルで、溶かしたガラスを繊維状にしてマット状に固めています。
そのため、断熱材の中でも比較的安価。
でも、安いから性能が低いわけではありません。
密度が高い製品を選べば、
これ本当にグラスウール??
というレベルで高性能になります。
断熱性能に関わるのは、
素材そのものよりも密度(kg/m³)。
高密度のものは繊維がぎゅっと詰まり、
空気の対流が起こりにくく、性能も安定します。
グラスウールの断熱性能や地域区分については、国土交通省の断熱性能(建築物省エネ法関連)解説が参考になります:断熱性能の解説(国土交通省).
グラスウールの“素材”としての耐久性は高い
誤解されがちですが、グラスウールは無機質素材。
つまり、
- カビない
- 腐らない
- 劣化しにくい
という性質があります。
素材単体としては実はとても“丈夫”なんです。
しかし、弱点は別のところにあります。
製品の規格や材料特性の参考としては、業界資料(例:断熱材解説PDF)も便利です:グラスウール等の保温材に関する技術資料(Nichias PDF).
最大の弱点:壁体内結露と施工不良

グラスウールは
空気中の水蒸気を通しやすいという特徴があります。
これは“吸水しない”というメリットにも
つながっていて、
たとえ濡れても素材内部に水分を抱え込まないため、
すぐに水滴になります。
ただし問題はここ。
水滴になる=乾きにくい
この性質によって、結露が起こると
壁内で湿った状態が長く続きやすい。
さらに施工が悪いと、
- 断熱材が沈む
- スカスカになる
- 隙間ができる
といった状態になり、断熱性能は一気に低下します。
「グラスウールはダメ」という話は、
ほとんどが施工不良による性能低下が原因です。
防湿処理が“超”重要。気密は水蒸気を止めるため

壁体内結露を防ぐためには、
徹底した防湿・気密処理が必須です。
多くのハウスメーカーや工務店が気密にこだわるのは、
実は
空気を止めたいからではなく、
水蒸気を止めたいから。
ここ、あまり一般には語られない部分です。
なぜかと言うと、ここを認めてしまうと
気密性能が良くなかった自社の物件が
暑い、寒い以前に
壁体内結露を引き起こす事故物件だという
大きな問題になってしまうからです。
防湿処理はとても繊細で、
- エアコン配管のスリーブまわり
- 配線・配管の貫通部
- 釘やタッカーの“針の穴”
こうした細かな部分からも水蒸気は侵入します。
つまり、
グラスウールの性能を引き出すには、
現場の理解と施工技術が極めて重要。
そして建てた後のリフォームでも、
防湿層を破らない配慮が必要になることも覚えておきたいポイントです。
結露対策や設計・施工の基準については、国交省の「住宅の設計と施工(結露対策)」などのガイドラインを参照してください:住宅の省エネルギー 設計と施工(結露対策の章).
コストパフォーマンスは最強
ここまで読んで、
じゃあ手間のかかる断熱材なの?
と思われるかもしれません。
正直に言うと、
そうです。
手間はかかります。
しかしその一方で、
価格 × 性能という視点では、
グラスウールは断熱材の中でもトップクラスのコスパを誇ります。
しっかりした施工ができる会社であれば、
費用を抑えつつ高性能な断熱仕様を実現できます。
だからこそ、
グラスウールは「選ぶ材料」ではなく
「選ぶ工務店」で性能が決まる
という、業界ならではの視点がとても重要に
なります。
その他の断熱材については
過去記事:断熱材の選び方完全ガイドが参考になります。
まとめ:グラスウールは“ちゃんと使えば最強クラス”

- 安い
- 高密度なら高性能
- 無機質で耐久性も高い
- ただし防湿・気密が甘いと一気に性能ダウン
- 施工技術がなにより重要
これが、プロとしての率直な意見です。
「性能を落とさず、賢く家づくりをしたい」
そんな方は、まず“丁寧な施工をする会社を見つけること”が最初の一歩です。

