家全体を断熱リフォームする予算はないけれど、せめてリビングだけでも暖かくしたい。
そう考えて「部分断熱」を検討される方は非常に多いです。
しかし、19年目の設計士として本音を言えば、部分断熱は家全体の断熱よりも「設計の難易度」が遥かに高い工事です。
安易に一部だけを断熱すると、
- 部屋は暖かくなったが、隣の廊下で結露とカビが爆発した
- 数百万かけたのに、期待したほど体感温度が変わらなかった
- 数年後、断熱材を剥がしたら柱が腐っていた
という、最悪の後悔を招くリスクがあるからです。
この記事では、部分断熱に潜む「見えない落とし穴」と、どうしても部分的に行う場合に守るべき「設計士の鉄則」を解説します。
第1章|なぜ「一部だけ」の断熱は家を壊すのか?
断熱リフォームの本質は、家の中に「魔法瓶」を作ることです。
部分断熱はこの魔法瓶を「部屋単位」で作ろうとする行為ですが、ここに大きな落とし穴があります。
1. 「露点(ろてん)」が室内にやってくる
断熱した部屋と、していない部屋の間には急激な温度差が生まれます。
その「境界線」となる壁の内部で結露が起きやすくなり、目に見えないところで構造材を腐らせる原因になります。
2. 熱は「弱いところ」へ集中する
これを「熱橋(ヒートブリッジ)」と呼びます。
一部を完璧に断熱しても、ドアの隙間やコンセントボックスから熱は容赦なく逃げます。

第2章|設計士が教える、部分断熱で「後悔するパターン」3選
パターン①:窓の対策を後回しにする
壁の断熱材を入れ替えても、窓がアルミサッシのままなら効果は半減します。
- 解決策: まずは「内窓」です。コスパ最強の断熱は窓から始まります。
パターン②:「気流止め」を忘れる
床下から壁の中に冷たい空気が流れ込む「気流」を止めないと、どんなに高価な断熱材もただの「フィルター」になってしまいます。
パターン③:断熱範囲の切り方が「間取り」優先
「LDKだけ」と決めても、キッチン横の勝手口や、階段室への入り口が無策だと、そこが冷気の滝(コールドドラフト)になります。
第3章|どうしても「部分断熱」をするなら?3つの成功鉄則
もし予算の関係で部分断熱を選ぶなら、設計士として以下の3点を死守することを推奨します。
- 「断熱境界」を明確にする
断熱する範囲を一つの「箱」として捉え、その箱の全周(床・壁・天井・開口部)を隙間なく囲うこと。 - 「厚み」よりも「隙間」を疑う
[【何mm必要?】断熱等級6・7の厚さ早見表] で推奨する厚みを入れるのは当然ですが、それ以上に「接続部の気密処理」を業者に徹底させてください。 - 換気ルートの再設計
断熱した部屋だけ湿気がこもらないよう、家全体の空気の流れをプロに見直してもらう必要があります。 [断熱改修後に換気計画が必須な理由]
第4章|その見積もり、境界線の処理は入っていますか?
部分断熱の成功は、業者が「断熱していない場所との取り合い」をどう考えているかで決まります。 「リビングだけパネルを貼れば大丈夫ですよ」という安易な提案には注意してください。

失敗を防ぐ一番の方法は、「部分断熱のリスクを理解し、対策を提示できる業者」を複数比較することです。
まとめ|「部分」だからこそ「全体」を知るプロに頼む
部分断熱は、実は全改装よりも高度な「計算」と「経験」が必要です。
金額の安さだけで選ぶのではなく、あなたの家の構造を理解し、「結露リスク」をはっきり口にする業者を選んでください。
[外部リンク:一般社団法人 日本住宅リフォーム産業協会(JERCO)]
もし、今の提案が「ただ断熱材を入れるだけ」の内容なら、一度立ち止まって第三者の視点を入れることを強くおすすめします。

※「部分断熱を検討中。境界の結露対策に詳しい会社を希望」と伝えると、より確実な会社が見つかります。






